ひらめく瞬間

f:id:juju68-sn:20180113130729j:plain

 どうでもいい問題を設定し、頭のなかでひねくりまわし、答えをさぐる、私はそうして暇をつぶす癖がある。
そんな時、ある瞬間、神の啓示を受けたかのようにパッとひらめくことがある。
誰もおもいつかなかったような、発想、定理、問題の決定的な答えが脳内に浮かび上がるのだ。
もしかして……私って天才? そう思わずにいられない。
そして何にたいしてかわからないが、ザマアミロ、という気持ちになったりする。
そんなふうにひとしきり浮かれたあと、今度はそれを誰かに話したいと思う。
つまり私ってこんなにすごいんだぜ、と自慢したいわけである。
身近な人ばかりだけでなく、このすごさを理解できる世界中のだれかに向けて、発信したい。
そうだ。今はネット、ブログというものがあるじゃない。
で、文章を書いて、発表。とこんなふうな経過をたどるわけである。

と、ここまではいい。
問題はそのあとだ。
それからしばらく時がすぎ、たまった本を整理していた時だった。
そのうちの一冊に何気なく目をとおして、私は発見してしまうのだ。
例の、天啓を受けたかのようにひらめいた答えが、そっくりそのままそこに書かれていることに。
何のことはない。過去にすでにその本を読んで、その内容をわすれていただけの話しだったのだ。
その答えの部分におそらく強い印象を受けたにちがいない。脳内の引き出しにしまいこまれたそれは、いつしか忘れさられ、時をへて、偶然その引き出しが開いて、外へ転がり出ただけだったのだ。
それをさも自分が発見したかのように、勘違いし、ひとりで浮かれていたわけなのだ。
まったく。調子に乗っていた自分がはずかしい。

でもこういうこと、けっこうあるんじゃないだろうか。
私にかぎらない。
世間でも、曲とか小説とかのパクリ疑惑。
きっとクリエイターたちは悪気なく、過去に影響をうけた作品を無意識のまま、アウトプットしてしまったに過ぎなのだろう。
私の場合、個人ブログというこじんまりとしたメディアで発表しただけ、恥ずかしい思いをせずにすんで、まだましだったのかもしれない。

ともあれ今回の件ははっきりしたことは、私はとくに突出した才能もない、平凡な人間だったという事実である。
大人になるというのはこういうことなのだろう。
ま、これでまたひとつ、謙虚さを身につけたと考えれば、いい経験をしたのかもしれない。