「追補編・70年代女性アイドル」

 一応、前回は、80年代というくくりでアルバムを選んでみたので、それにもれた、70年代のお気に入りアルバムのほうを、また新たに紹介していきたいと思う。

 一枚目は、桜田淳子の「しあわせ芝居」。

しあわせ芝居(11th)+α(紙ジャケット仕様)

1. しあわせ芝居 作詞・中島みゆき 作曲・中島みゆき 編曲・船山基紀
2. グッドバイ・ルート    作詞・橋本淳 作曲・穂口雄右 編曲・村松邦男
3. 黄昏通り 作詞・三浦徳子 作曲・馬飼野康二 編曲・村松邦男
4. バイ・バイ・パーティー 作詞・高橋幸宏 作曲・高橋信幸 編曲・村松邦男
5. 晩秋   作詞・穂口雄右 作曲・穂口雄右 編曲・村松邦男
6. 遠くに行かないで   作詞・松本隆 作曲・石川鷹彦 編曲・村松邦男
7. ベージュのソファー   作詞・三浦徳子 作曲・馬飼野康二 編曲・村松邦男
8. キャンドル・ライト   作詞・ちあき哲也 作曲・木村弘清 編曲・村松邦男

9. 青春の一番長い日 作詞・阿久悠 作曲・穂口雄右 編曲・村松邦男
10. メイビー・ハッピー 作詞・ちあき哲也 作曲・ヒロ柳田 編曲・村松邦男
11 .レディーズ・ルーム   作詞・橋本淳 作曲・穂口雄右 編曲・村松邦男

1977.12


 といっても、リアルタイムで体験しているわけでもないので、正直、思い入れも何もない。が、例によってsoptifyにはいっていたので、オリジナル・アルバムのいくつかを聴いてみた。そんな中、一枚通して聴けるな、好みに合うな、と感じたのが今作だった。
 発表されたのは、1977年12月で、この時期、ライバルともいえる存在の山口百恵は、宇崎竜童の夫婦コンビによる楽曲を歌い、アイドルから脱皮、一人の女性歌手としての個性を確率しつつあった。それに対抗してということだろう、桜田淳子側は、なんと中島みゆきを引っ張り込んできた。
 当時、今よりさらに、ダークでアングラな雰囲気をまとっていた中島みゆきを、天真爛漫、優等生的イメージだった桜田淳子にぶつけるというのは、かなりの冒険だったはずだが、彼女の別の面、大人の部分を引き出すのに成功している。セールス的にも、うまくいったようだ。
 先に出された、このシングル「しあわせ芝居」が、今作の核となっているためだろう、少しおくれて出た、このアルバムも、「淳子も大人になりました」という感じで、少しかげりのある、憂いをおびたアダルティな仕上がりになっている。
 AOR風、ミドルテンポの落ちついた曲が中心で、冬の夜、あたたかい紅茶でも飲みながら、しんみりと聞きたい感じ。一枚のアルバムとしてのまとまりもよく、個人的にはかなりお気に入りとなった。

 二枚目は岩崎宏美の「ファンタジー」。

ファンタジー+10(紙ジャケット仕様)

1. パピヨン 作詞・阿久悠 作曲・筒美京平 編曲・筒美京平
2. キャンパス・ガール   作詞・阿久悠 作曲・筒美京平 編曲・筒美京平
3. ファンタジー 作詞・阿久悠 作曲・筒美京平 編曲・筒美京平
4. 愛よ、おやすみ 作詞・ちあき哲也 作曲・筒美京平 編曲・筒美京平
5. 感傷的   作詞・阿久悠 作曲・筒美京平 編曲・筒美京平
6. おしゃれな感情   作詞・ちあき哲也 作曲・筒美京平 編曲・筒美京平
7. ひとりぼっちの部屋   作詞・穂口雄右 作曲・穂口雄右 編曲・穂口雄右
8. グッド・ナイト   作詞・穂口雄右 作曲・穂口雄右 編曲・穂口雄右
9. 月のしずくで 作詞・阿久悠 作曲・筒美京平 編曲・筒美京平
10 .センチメンタル   作詞・阿久悠 作曲・筒美京平 編曲・筒美京平

1976.2


 こちらは1976年に出た、彼女のオリジナル・アルバムとしては2枚目。
 デビューしてすぐに、大ヒットをとばし、今作におさめられている、サード・シングル「センチメンタル」もオリコンチャートで一位をとっているという時期だから、勢いがちがう。
 今作も何やら、浮足だつような、当時のホットな空気が封じ込められて、しらずに気分が上がっていくのがわかる。
 楽曲は数曲をのぞき、大半を阿久悠筒美京平によるコンビが担当。昭和歌謡界において、外すことのできない、巨大な存在、天才作詞家と天才作曲家である二人が全面的に関わっているのだから、当然のことクオリティは高い。
 当時はやっていたディスコの意匠をまとった、フィリーソウル風味のポップスでまとめている。そこへ歌謡曲調の、口ずさみたくなるような、京平氏お得意のキャッチーなメロディ、阿久悠の情感ただよう歌詞がのっているのだから、悪くなるはずがないのだ。
 もちろん、岩崎宏美は、それらを難なく歌い上げている。当時彼女は若干17歳! その安定感、あぶなげのなさは、すでに貫禄がただよい、余裕すらうかがわせるのだから、おそるべき才能である。
 そもそも彼女をアイドルという、範疇に入れていいものか、その外見からしても疑問で、すでに完成したベテラン女性歌手というオーラさえ感じられる。
 そして面白いのはこのアルバム、曲間に、糸井五郎という当時人気のあったラジオDJによる、曲紹介、おしゃべりが収録されているところ。はっきり言って、今聞くと、微妙だが、一周回ってアリだな、と思えなくもない。にしても、一回聞けば十分で、あとは正直、邪魔である。
 しかし、気の利いたことに、今作は、同時にDJなしバージョンも収録されており、問題はない。
 岩崎宏美に興味がある人はもちろん、阿久悠筒美京平ファンをも満足させてくれる、このアルバムは名盤だ、と言い切ってしまっていいだろう。

 ということで、今回は70年代の女性アイドルのお気に入りアルバムを紹介させていただいた。参考になれば幸いである。
 以上です。