YMOのベスト・アルバムが(また)出たぞ
気がつくと、またもYMOのベスト・アルバムが出ていた。タイトルは「NEUE TANZ」。
- 開け心 (ymo)
- BALLET (高橋)
- RIOT IN LAGOS (坂本)
- THE MADMEN (細野)
- GLASS (高橋)
- NEUE TANZ (YMO)
- COMOUFLAGE (高橋)
- PURE JAM (高橋)
- SIMOON (細野)
- CUE (高橋・細野)
- FIRECRACKER (マーティン・デニー)
- MULTIPLIES (エルマー・バーンスタイン、YMO)
- SPORTS MEN (細野)
- TAISO (坂本)
- 千のナイフ (坂本)
- NICE AGE (高橋)
結成40周年、過去のオリジナル・アルバムもまた新たにリマスターされて発売されるということで、その兼ね合いからか、ベストもあらためてつくっとこうという感じだろうか。
今回の目玉は、監修、選曲にテイ・トウワ。リマスターにまりんこと砂原良徳を起用した、YMOチルドレンが関わっている点だ。
さらにその曲目リストを見てびっくり。なかなか攻めた内容になっている。何しろ、「君に胸キュン」はもちろん、「テクノポリス」も「東風」も、そして「ライディーン」すらはいっていない。中心になっているのは、通うけすると言われる中期2枚のアルバム「BGM」「テクノデリック」の楽曲だ。
しかも同時期に出ていた、メンバー3人のソロ・アルバムから、それぞれ一曲ずつセレクトされているという、意表のつきっぷり。
正直どうなんだろう? と思ったが、通して聴いてみると、まぁこれもありかな、という感じ。
というか、あまたあるYMOのベスト盤、結局選ばれるのは、いつも同じ曲ばかりになってしまうのだから、こういう変化球もありだ。
ダークな雰囲気にまとめられた、今作のトーンは今の時代に合っているような気がしてくるし、全体にしっかりと、テイ・トウワの個性が感じられるのがさすがだ。
そしてまりんによるリマスターだが、昨今流行りなのだろうか、アナログ・レコードを思わせる、やわらかな音像で、空間の広がりを感じさせるものになっている。確かに、やったかいのある、これまでと違った印象があって悪くない。すでに音源を所有している往年のファンも一聴の価値はある。
とはいえ、さすがに代表曲のない今作は初心者向きのベストではないと思う。
初めての人になら、以前に出たベスト盤。「UC」か「YMO GO HOME」。共に普通に代表曲がおさめられた、二枚をすすめる。
「UC」は2003年発表。監修、選曲を坂本龍一。リマスターをテッド・ジャンセンが担当している。
DISC 1
- COMPUTER GAME "THEME FROM THE CIRCUS" (YMO)
- FIRECRACKER (マーティン・デニー)
- 東風 (坂本)
- 中国女 (高橋)
- TECHNOPOLIS (坂本)
- INSOMNIA (細野)
- RYDEEN (高橋)
- BEHINDE THE MASK (坂本)
- SOLID STATE SURVIVOR (高橋)
- RADIO JUNK (高橋)
- JINGLE Y.M.O. (YMO)
- NICE AGE (高橋)
- TIGHTEN UP (アーチー・ベル)
- THE END OF ASIA (坂本)
- CITIZENZ OF SCIENCE (坂本)
- 開け心 (YMO)
DISC 2
- CUE (高橋・細野)
- BALLET (高橋)
- U.T (YMO)
- GRADATED GREY (細野)
- TAISO (坂本)
- 恋人よ我に帰れ (しぐモンド・ロンバーグ)
- 君に胸キュン (YMO)
- CHAOS PANIC (細野)
- ONGAKU (坂本)
- LOUTUS LOVE (細野)
- 邂逅 (坂本)
- 過激な淑女 (YMO)
- THE MADMEN (細野)
- 以心電信 (YMO)
- PERSPECTIVE (坂本)
- M-16 (YMO)
- ポケットが虹でいっぱい (フレッド・アイズ・ベン・ウェイズマン)
- BEHIND THE MASK (坂本)
選ばれた曲が、途中にレア音源などをまじえながら、年代順に並べられた、単純な構成をしており、正直、おもしろみは感じられない。が、初心者にはこのほうが、わかりやすくていいのだろう。
個人的には「M-16」という、YMO写真集「ピリオド」にふろくCDとして入っていた曲が聞けてよかった。
メンバー3人の作曲した楽曲がバランスよく、選ばれてはいるが、なんとなく、坂本龍一の曲が目立つという印象が残るのがおもしろい。
テッド・ジャンセンによるリマスターは、デジタル臭が強いというか、各楽器がくっきりと浮かび上がるような、解像度の高い音になった印象で、好みはわかれると思うが、こちらも一聴の価値はある。
しかし個人的には「YMO GO HOME」の方がおすすめである。
DISC1
- JINGLE Y.M.O (YMO)
- RYDEEN (高橋)
- BEHIND THE MASK (坂本)
- INSOMNIA (細野)
- CUE (高橋・細野)
- U.T (YMO)
- NICE AGE (高橋)
- TAISO (坂本)
- COSMIC SURFIN' (細野)
- 以心電信 (YMO)
- ポケットが虹でいっぱい (フレッド・アイズ・ベン・ウェイズマン)
- 東風 (坂本)
- 中国女 (高橋)
- FIRE CRACKER (まーティン・デニー)
DISC2
- MULTIPLIES (YMO)
- TIGHTEN UP (アーチー・ベル)
- SIMOON (細野)
- CITIZENZ OF SCIENCE (坂本・高橋)
- COMOUFLAGE (高橋)
- GRADATED GREY (細野)
- PURE JAM (高橋)
- LOTUS LOVE (細野)
- 君に胸キュン (YMO)
- SHADOWS ON THE GROUNDE (坂本・高橋)
- BEA SUPERMAN (坂本・高橋)
- WHERE HAVE ALL THE FLOWERS GONE? (ピート・シーガー)
- TECHNOPOLIS (坂本)
- THE END OF ASIA (坂本)
こちらは1999年に出た、細野晴臣、監修、選曲。リマスタリングを小池光夫が担当したベスト。
細野氏がDJをするがごとく、年代順にこだわらず、縦横無尽に曲がならび、その流れが実に、個性が感じられて興味深い。
おそらくこの時期の細野氏の気分だったのだろう。スネークマンショウのコントがはさみこまれた、ミニ・アルバム「増殖」から多く選ばれているのが大きな特徴で、そのせいか全体的に、明るくユーモラスな雰囲気のただようアルバムになっている。
こちらもまたメンバーそれぞれの曲が均等に選ばれているが、また不思議と細野氏の楽曲が印象に残る。
一方、YMOのオリジナル・アルバムにエンジニアとして参加していた、小池光夫氏によるリマスタリングは、変に音をいじりすぎない自然なもので、今聴いても違和感はなく、個人的にはいちばん好みかもしれない。
という感じで、どのベストにも共通しているのは、選曲者の顔がその裏に透けて見えてくるところ。何を選び、どう並べるのかで、印象がまったく違ってくるのだ。
ベスト盤では選ばれにくい曲をならべて、個人的なYMOベストを制作してみました。
ぜひ聞いてみてください。