YMOのベスト・アルバムが(また)出たぞ

 気がつくと、またもYMOベスト・アルバムが出ていた。タイトルは「NEUE TANZ」。

NEUE TANZ

  1. 開け心 (ymo)
  2. BALLET (高橋)
  3. RIOT IN LAGOS (坂本)
  4. THE MADMEN (細野)
  5. GLASS (高橋)
  6. NEUE TANZ (YMO
  7. COMOUFLAGE (高橋)
  8. PURE JAM (高橋)
  9. SIMOON (細野)
  10. CUE (高橋・細野)
  11. FIRECRACKER (マーティン・デニー
  12. MULTIPLIES (エルマー・バーンスタインYMO
  13. SPORTS MEN (細野)
  14. TAISO (坂本)
  15. 千のナイフ (坂本)
  16. NICE AGE (高橋)


 結成40周年、過去のオリジナル・アルバムもまた新たにリマスターされて発売されるということで、その兼ね合いからか、ベストもあらためてつくっとこうという感じだろうか。

 今回の目玉は、監修、選曲にテイ・トウワ。リマスターにまりんこと砂原良徳を起用した、YMOチルドレンが関わっている点だ。
 さらにその曲目リストを見てびっくり。なかなか攻めた内容になっている。何しろ、「君に胸キュン」はもちろん、「テクノポリス」も「東風」も、そして「ライディーン」すらはいっていない。中心になっているのは、通うけすると言われる中期2枚のアルバム「BGM」「テクノデリック」の楽曲だ。
 しかも同時期に出ていた、メンバー3人のソロ・アルバムから、それぞれ一曲ずつセレクトされているという、意表のつきっぷり。
 正直どうなんだろう? と思ったが、通して聴いてみると、まぁこれもありかな、という感じ。
 というか、あまたあるYMOのベスト盤、結局選ばれるのは、いつも同じ曲ばかりになってしまうのだから、こういう変化球もありだ。
 ダークな雰囲気にまとめられた、今作のトーンは今の時代に合っているような気がしてくるし、全体にしっかりと、テイ・トウワの個性が感じられるのがさすがだ。
 そしてまりんによるリマスターだが、昨今流行りなのだろうか、アナログ・レコードを思わせる、やわらかな音像で、空間の広がりを感じさせるものになっている。確かに、やったかいのある、これまでと違った印象があって悪くない。すでに音源を所有している往年のファンも一聴の価値はある。

 とはいえ、さすがに代表曲のない今作は初心者向きのベストではないと思う。
 初めての人になら、以前に出たベスト盤。「UC」か「YMO GO HOME」。共に普通に代表曲がおさめられた、二枚をすすめる。
 「UC」は2003年発表。監修、選曲を坂本龍一。リマスターをテッド・ジャンセンが担当している。

UC YMO [Ultimate Collection of Yellow Magic Orchestra](Blu-spec CD)【完全生産限定盤】

DISC 1

  1. COMPUTER GAME "THEME FROM THE CIRCUS" (YMO)
  2. FIRECRACKER (マーティン・デニー
  3. 東風 (坂本)
  4. 中国女 (高橋)
  5. TECHNOPOLIS (坂本)
  6. INSOMNIA (細野)
  7. RYDEEN (高橋)
  8. BEHINDE THE MASK (坂本)
  9. SOLID STATE SURVIVOR (高橋)
  10. RADIO JUNK (高橋)
  11. JINGLE Y.M.O. (YMO
  12. NICE AGE (高橋)
  13. TIGHTEN UP (アーチー・ベル)
  14. THE END OF ASIA (坂本)
  15. CITIZENZ OF SCIENCE (坂本)
  16. 開け心 (YMO

DISC 2

  1. CUE (高橋・細野)
  2. BALLET (高橋)
  3. U.T (YMO
  4. GRADATED GREY (細野)
  5. TAISO (坂本)
  6. 恋人よ我に帰れ (しぐモンド・ロンバーグ)
  7. 君に胸キュン (YMO
  8. CHAOS PANIC (細野)
  9. ONGAKU (坂本)
  10. LOUTUS LOVE (細野)
  11. 邂逅 (坂本)
  12. 過激な淑女 (YMO
  13. THE MADMEN (細野)
  14. 以心電信 (YMO
  15. PERSPECTIVE (坂本)
  16. M-16 (YMO
  17. ポケットが虹でいっぱい (フレッド・アイズ・ベン・ウェイズマン)
  18. BEHIND THE MASK (坂本)


 選ばれた曲が、途中にレア音源などをまじえながら、年代順に並べられた、単純な構成をしており、正直、おもしろみは感じられない。が、初心者にはこのほうが、わかりやすくていいのだろう。
 個人的には「M-16」という、YMO写真集「ピリオド」にふろくCDとして入っていた曲が聞けてよかった。
 メンバー3人の作曲した楽曲がバランスよく、選ばれてはいるが、なんとなく、坂本龍一の曲が目立つという印象が残るのがおもしろい。
 テッド・ジャンセンによるリマスターは、デジタル臭が強いというか、各楽器がくっきりと浮かび上がるような、解像度の高い音になった印象で、好みはわかれると思うが、こちらも一聴の価値はある。

 しかし個人的には「YMO GO HOME」の方がおすすめである。

YMO GO HOME

DISC1

  1. JINGLE Y.M.O (YMO
  2. RYDEEN (高橋)
  3. BEHIND THE MASK (坂本)
  4. INSOMNIA (細野)
  5. CUE (高橋・細野)
  6. U.T (YMO
  7. NICE AGE (高橋)
  8. TAISO (坂本)
  9. COSMIC SURFIN' (細野)
  10. 以心電信 (YMO
  11. ポケットが虹でいっぱい (フレッド・アイズ・ベン・ウェイズマン)
  12. 東風 (坂本)
  13. 中国女 (高橋)
  14. FIRE CRACKER (まーティン・デニー

DISC2

  1. MULTIPLIES (YMO
  2. TIGHTEN UP (アーチー・ベル)
  3. SIMOON (細野)
  4. CITIZENZ OF SCIENCE (坂本・高橋)
  5. COMOUFLAGE (高橋)
  6. GRADATED GREY (細野)
  7. PURE JAM (高橋)
  8. LOTUS LOVE (細野)
  9. 君に胸キュン (YMO
  10. SHADOWS ON THE GROUNDE (坂本・高橋)
  11. BEA SUPERMAN (坂本・高橋)
  12. WHERE HAVE ALL THE FLOWERS GONE? (ピート・シーガー
  13. TECHNOPOLIS (坂本)
  14. THE END OF ASIA (坂本)

 こちらは1999年に出た、細野晴臣、監修、選曲。リマスタリングを小池光夫が担当したベスト。
 細野氏がDJをするがごとく、年代順にこだわらず、縦横無尽に曲がならび、その流れが実に、個性が感じられて興味深い。
 おそらくこの時期の細野氏の気分だったのだろう。スネークマンショウのコントがはさみこまれた、ミニ・アルバム「増殖」から多く選ばれているのが大きな特徴で、そのせいか全体的に、明るくユーモラスな雰囲気のただようアルバムになっている。
 こちらもまたメンバーそれぞれの曲が均等に選ばれているが、また不思議と細野氏の楽曲が印象に残る。
 一方、YMOのオリジナル・アルバムにエンジニアとして参加していた、小池光夫氏によるリマスタリングは、変に音をいじりすぎない自然なもので、今聴いても違和感はなく、個人的にはいちばん好みかもしれない。
 という感じで、どのベストにも共通しているのは、選曲者の顔がその裏に透けて見えてくるところ。何を選び、どう並べるのかで、印象がまったく違ってくるのだ。

 

ベスト盤では選ばれにくい曲をならべて、個人的なYMOベストを制作してみました。

ぜひ聞いてみてください。

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