なぜエヴァのシンジくんのお父さんゲンドウってあんななのか？

（最初にこれはあくまでエヴァで描かれるゲンドウとシンジくんとのやり取りから触発された個人的な考察であって、エヴァンゲリオンの本筋とは無関係であることをお断りしておきます。）

なんとなくエヴァを見返していました。そして、主人公シンジくんのお父さんであるところのゲンドウは、どうしてあれほど困った父親なんだろう。と改めて思ってしまったのです。
いや、なかなか本当に、困ったパーソナリティの持ち主なのですよ碇ゲンドウという男は。

まず第一の問題点は、母親が死んで保護者は彼だけであるのにもかかわらず、育児放棄をしているところ。
シンジくんの回想シーンから推察するに、容赦のない言動でもして泣かしたあげく、里親のもとへ見捨てていったと思われる。

そして第二の問題点として、男1人仕事の方も大変なことになってるし、面倒をみてはいられないから子供をあずける。という点は大目にみるとして、しかし一転、自分の都合で急遽、呼び戻しているところ。
シンジくんにしても預けられた先で里親なり友人なりと人間関係をようやく築き上げていたかもしれないというのに、問答無用で呼び戻されてはたまったものではあるまい。
せめて、悪かったなとか、元気でやっていたのか、とか、本心からでなくとも優しい言葉のひとつでもかけてやれば、事はスムーズに運ぶかもしれないのに、それすらもゲンドウはしない。

最後に第三の問題点として、シンジくんの意思をガン無視して、モノのように扱い、死地へとおもむかせ、なんだったら死んでもかまわない、というか、あからさまに殺しにきてるとこだろう。
見ていると明らかに、ゲンドウは息子であるシンジくんを憎み、死んでくれと願ってさえいるようにみえる。
敵の執拗な攻撃にさらされて、悶え苦しみ助けをもとめていても、少しも心動かされることもなく、成果をあげて戻っても、激励やねぎらいの言葉ひとつかけるでもないときては、やっていられるかと、シンジくんが荒れるのも無理はないだろう。

実際ここまでくると、もはや憎んでいるどころではない、精神的に異常な疾患をもっているのではないかと疑いたくレベルだ。
なぜ、このような異常な性格をゲンドウは有するようになってしまったのだろう。

そもそも男というのは自分の存在や地位をおびやかす、他人である他の男をおそれる。それは遺伝子レベルですりこまれた動物のオスとして本能であり、仕方がないことだ。
なかでも、自分と同じ素質を持つ他人、兄弟であったり、自らの子供であったり、に最も脅威をおぼえるは自然なことだろう。
なぜならもっとも近い位置に存在し、同じような能力、体力を持っているのだから、いつ打ち負かされるか油断がならないからだ。
もし社会的倫理観をとっぱらうことが可能であれば、おそらく積極的に排除しようとするのではないか。
それゆえに父と息子の確執はあって当然。むしろ無いほうが不思議とすらいえる。

そしてさらに問題なのは、人というのは意識的にせよ無意識的にせよ、自分がされたことを他人たにたいしてもしてしまうということだろう。
つまり虐待を受けた子供は、長じて親になると、自分の子供を同じように虐待してしまう可能性が高いということだ。
となると将来、シンジくんが結婚し（相手はやはりアスカだろうか）子供を持った場合、その子にたいして自分が受けたのと同じ虐待をする可能性がある。
負の連鎖は続いていくのだ。
しかしシンジくんもまさか、そんな親になどなりたくないだろう。となればこの負の連鎖を、どうにかして断ち切らねばならない。
どうやって？

それは実はちゃんと、エヴァのラストで描かれていたのだった。
シンジくんはサードインパクトの最中、インナートリップしてさまざまなイメージを見るのだが、そのなかに父親であるゲンドウをエヴァでにぎりつぶすシーンがでてくる。
あれは脳内で親という存在を殺す、乗り越えるという意味があるのだろう。
父親を1人の男として、良いところ、悪いところも含めて、自ら飲み込んでしまうことで、その呪縛から逃れ、大人の男になることを象徴しているシーン。
つまりシンジくんはあの瞬間、ゲンドウと対等な立場にたつ大人の男になったわけで、とするともう子供ではないのだから、ゲンドウとの間に父と子との確執は存在し得ないことになる。
このように考えていくと、逆に、ゲンドウは結局、大人になりきれなかった、内面は子供のままな人間ということなのだろう。ゲンドウがあんななのはつまり、そういうことだったのだ。

ゲンドウと違い、大人になったシンジくんはだから、将来息子ができても、ゲンドウのように虐待をくわえるような父親にはならないと思われる。

以上ですっ！