スパイダーマン ホームカミング

 

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 スパイダーマン ホームカミングを観たのでその感想を書こうと思う。
 まず結論から言うと、これが予想外におもしろかった。
 しかしスーパー・ヒーロー物のというよりも、青春学園物、という印象の強い映画、ではある。
 とくに面白いなと思ったのは、学園物というと、ここ最近は、どれもがスクール・カーストっていうのか、学校内における身分格差をネタにしたものが多くて、やるせない気分におそわれるんだが、今作は、意図的にそうした部分をはぶいているっぽいところ。
 そもそも必ずお約束のように出てくる、ラグビーとかやってるマッチョな男子と、チアガールをやってるグラマラスな女子、というスクールカースト上位に位置する典型的なキャラクターがいないところからもそれは明らかだ。
そして代わりに出てくるのは、様々な人種の個性的な子供達だったりする。
これがまた、いかにも十代半ばの子供らしく、馬鹿っぽかったりしてかわいいのが印象的。
 日本人の私からすると、映画内で描かれるアメリカのティーン・エイジャーは大人びて生意気で、どうにも共感できなかったんだけど、今作は実に等身大というのか、10代半ばだった頃の私に照らし合わせてみても、違和感がないというか、ああ、こんな奴らいたな、という風に納得できたのである。
というか、そもそも、典型的なアメリカの白人少年というのが、主人公であるピーター・パーカーしか出てこない。彼が恋におちるヒロイン役も、白人と黒人のミックスだったりするし。
 このように、徹底的に雑多な民族が、平等に学園生活をおくっているという姿を描いているのだ。

これはきっと、トランプ政権の白人至上主義による、昨今の殺伐としたアメリカのイメージをくつがえすためとしての、ある種、アンチテーゼとしての意味合いもあるのかもしれない。
世界マーケットを意識して作られているハリウッド映画としては、アメリカは様々な人種の人たちに開かれた自由の国である、というイメージを強調しなければならないのだろう。
でなければ、いまや大きな収入源となっているアジア圏の観客を望めなくなるだろうから。
実際、いい味だしている主人公の相棒は日系人だし、ライバルっぽい立ち位置の男子はインド系だったりするのだ。
と、このようにヒーローものとしてより、ティーンエイジャー映画として、高感度の高い作品だったように思う。
とはいえ、もちろんアクション・シーンもよくできており、文句なくおもしろい。
とくに懐かしく感じられたのは、エレベータ落下、船上パニックなど、災害を防ごうと奮闘するシーン。
困っている庶民たちを助ける、といった、よく考えればヒーローものの基本的な事柄が、きちんと描かれて、ここ最近のヒーローたちのシリアスな内面ばかりがクローズアップされてきたマーベル・ヒーロものなかでは異色で、新鮮に感じられた。
という感じで、この映画、総じて八十年的というのだろうか、全てがのんびりと余裕のあった当時にレイドバックした雰囲気にみちている。
 社会情勢が世知辛くなってきた昨今、せめて映画の中くらい楽しい夢を見させてほしいものだ、といった願望をかなえてくれる良作だと思う。
というわけで、国や年齢、性差のくべつなく誰にも楽しめる開口のひろい映画に仕上がっていた。とくに十代の少年少女に観てもらいたいと個人的には思った次第。